【開催日時】
2024年6月11日(火)19:00~20:00
【座長】
播磨 綾子(国立公務員共済組合連合会虎の門病院)
【演者】
水野 篤(聖路加国際病院)
【イベント内容】
【参加費無料】ダイバーシティ推進委員会Next Generation部会(旧U-40部会)が企画する新たなwebinar “JCS Channel presented by Next Generations” はNext Generation部会メンバー座長のもと、スペシャルゲストをお招きし、循環器領域に限らず様々なトピックについて語って頂きます。
第5回は「循環器関連で基礎からわかる行動経済学」として、聖路加国際病院循環器内科の水野篤先生にご講演頂きました!
【講演概要】
JCS Channel Presented by Next Generations シリーズ 第5回「循環器関連で基礎からわかる行動経済学」
水野篤先生は臨床診療に加え、心不全の緩和ケアや医学教育など幅広い分野でご活躍されており、今回の講演テーマは「循環器関連で基礎から分かる行動経済学」です。
水野先生は、行動経済学の基本的な考え方や定義、バイアスの例などを紹介した後、自身がペンシルバニア大学で行っていた循環器領域と行動経済学に関する研究について解説され、行動経済学の基礎として、人は周りの状況や情報の提示の仕方によって判断が変わってしまうという「フレーミング効果」について、有名な「ミュラー・リヤー錯視」と「アジアン・ディジーズ・プロブレム」を例に説明しています。
「アジアン・ディジーズ・プロブレム」は、同じ内容を異なる表現で提示することで、人々の意思決定が変化することを示した実験です。この実験から、人は、利益を得る場合には確実性を好み、損失を被る場合にはリスクを負ってでも損失を回避しようとする傾向があることが分かります。
これらの例を挙げた上で、行動経済学は、人々の行動を理解し、より良い意思決定を促すために役立つ学問であると述べています。
📚 講演内容
「循環器関連の基礎からわかる行動経済学」について、行動経済学の基本的な考え方や有名なバイアスの例を通じて、循環器医学との関わりを解説。
- 📊 順番やエフェクトの重要性:同じ提示内容でも、順番やエフェクトによって異なる反応が起こることを理解するのが重要です。
- 💭 感情と意思決定の関係:感情が意思決定に大きく影響し、怒っている時や喜んでいる時は特に注意が必要です。
- 🧠 システム1とシステム2:選択肢が多いと、直感的に楽な選択をしがちであり、これは認知バイアスに影響を受けやすくなることを示しています。
- 🔄 不確実性とリスクの理解:リスクはある程度予測可能である一方、不確実性は完全には予測できない状況を指します。
- ⏳ 現在バイアス:未来の結果よりも、目先の利益を優先する傾向があり、行動変容に影響します。
- 🎯 損失回避とデフォルト効果:損失を避けようとする心理が行動変容を促進することがあり、行動経済学の重要な介入法です。
- 🏃 身体活動促進と金銭的インセンティブ:金銭的報酬や損失回避が運動促進に効果的であることが示されています。
- 🚬 禁煙支援:持続的行動(禁煙)の場合、金銭的インセンティブが有効ですが、損失回避のフレームは効果が減ることがあります。
- 🕹️ ゲーミフィケーションの活用:ポイントシステムを用いた損失回避も金銭的インセンティブと同様の効果が得られる可能性があります。
- 🧠 自由意志の尊重:行動経済学では、患者が自ら意思決定できる選択肢を提供し、強制しないことが大切です。
- 📈 プロフェッショナリズムの重要性:医療者は倫理観を持ち、専門的な判断を示しつつ、患者を支援する役割が求められます。
- 🛠 AIと行動経済学の融合:AIが医療意思決定を支援する未来が期待されているが、倫理と研究が必要です。
- 🕒 効率的な意思決定:限られた時間の中で、ビデオやガイドラインを活用し効率を高める工夫が求められます。
- 📚 教育と継続的学習:経済学や行動変容を学ぶことは、患者に優しい意思決定の基礎となる重要な知識です。
このような形で、行動経済学の視点で患者との関わりや意思決定に気をつけるポイントが学べるとされています。
【水野篤先生おすすめの書籍】

医療現場の行動経済学―すれ違う医者と患者

行動経済学が最強の学問である

NUDGE 実践 行動経済学 完全版

予想どおりに不合理: 行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」

ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット

行動経済学 ~経済は「感情」で動いている~