凡例

編集方針

  • 循環器学の研究者が論文を書くにあたって用いる循環器学に関する用語を中心に採録した。

  • 用語の現状を整理することを基本的立場とし,基本語の組み合わせにより成立する複合語も重要と思われるものは積極的に掲載した。また,ほぼすべての外来の用語に和訳を記載した。

  • 新しい用語は積極的に採録した。

  • 日本医学会医学用語辞典英和(第3版),他の関連学会の既成の用語集,米国国立医学図書館が編纂するUnified Medical Language System(UMLS)との統一を図った。

用語の選定

  1. 循環器学の分野において使用される用語およびこれに関連の深い用語を採録することを原則とした。

  2. 欧語としては,英語(米式綴り)を原則としたが,日常慣用されるラテン語,フランス語なども加えた。

  3. 英和編,和英編とし,見出し語各々,14,476語を掲載した。

  4. 名詞を主としたが,形容詞,分詞,過去分詞,動名詞等の形容語も必要に応じ採録し,【形】を付記した。

  5. 旧称,古語は,原則として採録しなかった。

  6. 英語の用語に対して,和訳はなるべく一語にするように努めたが,広く使用されているものや異なる2つ以上の意味を有する単語においては,複数の語を採用した。

英語の表記方針

  1. 英語の頭字は原則として小文字(small letter)とした。ただし,固有名詞,略語等は慣用にしたがい,大文字(capital letter)とした。

  2. しばしば頭字語(acronym)の形で略語(abbreviation)が用いられるものは,( )内に略語を示した。また,略語も見出し語に収載した。

    electrocardiogram(ECG)
    心電図
    ECG(electrocardiogram)
    心電図
    心電図
    electrocardiogram(ECG)
    activities of daily livings(ADL)
    日常生活動作
    ADL(activities of daily livings)
    日常生活動作
    日常生活動作
    activities of daily livings(ADL)

    ただし,略語は,複数単語を略した略語のみ採用し,1単語からの略語は原則として掲載しなかった。

    coenzyme A (CoA):掲載
    adenosine triphosphatase (ATPase):掲載
    adrenomedullin (AM),acetylcholine (ACh):略語は掲載せず

    略語を含む複合語の場合,先頭単語が略号の場合のみ構成単語と略語の両方を見出し語に掲載したが,2番目以降の単語が略語をなす場合は両者の掲載配列が近接するため,原則として略号(構成単語)の形のみを掲載し,構成単語(略語)の形は示さなかった。

    LDL(low density lipoprotein) apheresis
    low density lipoprotein(LDL) apheresis
    oxidized LDL(low density lipoprotein)

  3. 元素名は,元素記号(元素名),および元素名(元素記号),の両者を掲載した。

    Na(sodium) ,sodium(Na)
    K(potassium) ,potassium(K)

    ただし,両者のアルファベットが2文字以上同一で配列上近接するときは,元素記号(元素名)の表記のみとした。

    Ga(gallium)
    In(indium)

  4. 用語は原則として単数形を用い,単複のまぎらわしいと思われるものには複数形を(pl. )で表示した1)。複数形が慣用されるものは例外とした2)。

    1)verruca(pl. verrucae)
    いぼ,疣贅
    2)metabolic equivalents(MET[s])
    メッツ,代謝率,代謝平衡
  5. 冠詞は原則として省略した。

  6. 欧語のハイフンの有無,位置はUMLSにならった。

  7. 人名を冠した用語は,UMLSでは原則として所有格を表わすアポストロフィsを付しており,日本医学会も同様の見解を有する。本用語集も人名を冠する病名には原則としてアポストロフィsを付した。

    Addison's disease アジソン病

  8. 一語の用語には,可能な限り発音記号をつけた。発音記号は,医学英和大辞典(南山堂)および,ステッドマン医学大辞典(メジカルビュー社)によった。

  9. 大規模試験の名称は極めて重要なもの以外は原則として割愛した。

  10. 薬品名は主要なものを掲載した。

英語の配列

  1. アルファベット(A,B,C…)順とし,一語毎に順位付けした。

  2. ギリシア文字は,英語に直して配列した。

    alpha(α) ,beta(β)

  3. ハイフン,ウムラウト(人名のみ),アクサンはないものとして配列した。

  4. a waveなどのaは,一語として配列した。

  5. 複合語を見出しとする場合は,最初の単語について同一のものを集合させ,二番目の単語以下はアルファベット順として配列した。

  6. 物質名の数字はないものとして配列した。

    3-dimethyl-p-iodophenyl-pentadecanoic acid

日本語の表記方針

  1. 漢字は原則として当用漢字を用いた。

  2. 外国人の人名,外来語はカタカナ表記とし日本医学会医学用語辞典英和(第3版)にならった。

  3. 日本語の長音は,最近の一般的傾向に従い,3節以上の場合省くのを原則とした。

    ペースメーカ

  4. 元素名は,元素名(元素記号)と記載した。

    ナトリウム(Na)
    カリウム(K)

  5. 日本医学会医学用語委員会の見解に従い省略可能な「性」をなるべく省略した。一部は,省略形との併用を可とし,[性]で示した。

    上室頻拍,心室期外収縮,労作[性]狭心症,冠攣縮[性]狭心症

  6. タンパクは,単独でないときは漢字で表記した。

    アポリポ蛋白

  7. 数字表記には,漢数字,アラビア数字,ローマ数字等があるが,これらについては慣用もあり,用語によって表記を使い分けた. primary endpoint一次エンドポイント

    type 1 diabetes 1型糖尿病
    first heart sound [第]I音

  8. 英語の - (ハイフン)は,日本語では,ハイフン無しか,必要なら・とした。
    ただし,数字の時はハイフンのままとした。

    cooled-tip クールドチップ
    endothelial cell-leukocyte interaction 内皮細胞・白血球相互作用
    In(indium)-111 インジウム(In)-111

日本語の配列

  1. 頭字のアルファベット,ひらがな,カタカナ(清音,濁音),漢字の順に配列した。但し,頭字以外は一字毎に清音,濁音の順にした。

  2. ギリシア文字は,日本語に直して配列した。

    アルファ(α) ,ベータ(β)

記号

その他

  1. 楔入圧は「せつにゅうあつ」,重複は「じゅうふく」として配列した。

  2. angiotensinには,「アンジオテンシン」「アンギオテンシン」の表記法があるが,前者に統一した。アンジオジェニン,アンジオペプチン,アンジオポエチン,アンジオスタチンも同様である。

  3. 「頸」は「頚」に,「繊維」は「線維」に,「潅流」は「灌流」に,「交叉」は「交差」に統一した。

  4. 冠動脈,冠状動脈は,両者を可とし,冠[状]動脈とした。

  5. ...弁狭窄,...弁狭窄症は,両者を可とし,...弁狭窄[症]とした。英語表記は,UMLSにならい,....stenosis,....valve stenosisの両者を採用した。

    aortic [valve] stenosis 大動脈弁狭窄[症]

    同様に...弁逆流,...弁閉鎖不全も以下のようにした。

    aortic [valve] regurgitation 大動脈弁逆流[症]
    aortic [valve] insufficiency 大動脈弁閉鎖不全[症]

  6. imagingの日本語訳は,イメージング,[画]像,または撮像[法]とした。

  7. intervalは間隔,時間の両者を可とした。

    PR interval PR間隔(時間)
    QT interval QT間隔(時間)
    また,QRS intervalは,QRS幅も可とした。

    QRS interval QRS間隔(時間,幅)
    なお,PP interval,RR intervalは,PP間隔,RR間隔とした。

  8. UMLSにならいfour-chamber,short-axisなどのハイフンは除いた。

  9. chest compressionの日本語訳は,ガイドライン2005の日本語訳に際して心肺蘇生法委員会で「胸骨圧迫」が採用されたため,胸部圧迫でなく胸骨圧迫とし,心[臓]マッサージを併記した。

  10. enddiastoleは,UMLSにならい,end diastoleとした。ただし形容詞の時はハイフンを伴う(end-diastolic)(UMLS)。end systole,end-systolicも同様とした。なお,end-tidalは,UMLSにならいend tidalも併記した。

  11. 気管への挿管について,UMLSにはtracheal intubationとendotracheal intubationの両者が掲載されているため,tracheal intubation 気管挿管,endotracheal intubation 気管内挿管,気管挿管として両者を掲載した。

  12. ...誘発性に相当する...inducedは通常ハイフンを伴うが(.....-induced),UMLSではexercise inducedに限ってハイフンを付けていないため,これにならいそれのみexercise inducedとした。

  13. Austin-Flint murmur,Carey-Coombs murmur,Graham-Steell murmurなどの心雑音の名称はUMLSではハイフンを伴わないためそれにならった。

  14. SPECT(single photon emission computed tomography)は,単光子放出型コンピュータ断層撮影[法]と訳されているため,PET(positron emission tomography)をポジトロン(陽電子)断層法(旧版)からポジトロン(陽電子)放出型断層撮影[法]とした。

  15. pulmonary capillary pressureはUMLSには掲載がなく,pulmonary artery wedge pressureとpulmonary capillary wedge pressureが採用されているため,前一者は削除し,後二者を掲載した。

参考書籍

  1. Fuster V, et al.:Hurst's The Heart 10th edition. McGraw-Hill. 2001
  2. Braunwald E, et al.:Harrison's Principles of Internal Medicine 15th edition. McGraw-Hill. 2001
  3. Braunwald E, Zipes DP, Libby P:Heart Disease:A Textbook of Cardiovascular Medicine. 6th edition. W.B. Saunders Company. 2001
  4. 吉川純一ほか編:心臓病診療プラクティス第16巻:心不全を癒す.文光堂.1998
  5. 小室一成編著:心不全フロンティア-成因の解明から再生医療への可能性.メディカルビュー社,2003
  6. 矢崎義雄ほか編集:循環器NOW10.運動指導・運動療法.南江堂.1995
  7. 谷口興一監訳,Wasserman K, et al (Edit):運動負荷テストの原理とその評価法-心肺運動負荷テストの基礎と臨床.南江堂.1999
  8. 水野康ほか編:循環器負荷試験法−理論と実際.診断と治療社.1986
  9. 由谷親夫監訳,Bloom S, et al.(Edit):臨床医のための心血管疾患の病理診断基準.医学書院.1999
  10. 玉木長良編:心臓核医学の基礎と臨床(改訂版)最新の心臓核医学の手法と臨床応用への手がかり.メジカルセンス.2003
  11. 齋藤宗靖著:心臓病と運動負荷試験.中外医学社.1988
  12. 日本体力医学会体力科学編集委員会監訳,American College of Sports Medicine編集:運動処方の指針-運動負荷試験と運動プログラム.南江堂.2006
  13. Wasserman K, et al.(Edit):Principles of Exercise Testing and Interpretation. Lippincott Williams & Wilkins. 2004
  14. McArdle WD, et al.:Exercise Physiology:Energy, Nutrition and Human Performance. Ler & Bebiger, 1991
  15. Wenger NK, et al (Edit):Cardiac Rehabilitation. A Guide to Practice in the 21st Century. Marcel Dekker. 1999
  16. 冠動脈の臨床 上・下.日本臨床増刊号.2003
  17. 杉本恒明監修:新不整脈学.南江堂.2003
  18. 小川聡ほか編:抗不整脈薬のすべて.先端医学社.2003
  19. 篠山重威編:心不全.医薬ジャーナル社.1997
  20. 吉川純一編著:臨床心エコー図学.文光堂.2001
  21. 日本超音波医学会編:新超音波医学第3巻 循環器.医学書院.2000
  22. 高尾篤良ほか編:臨床発達心臓病学(改訂3版).中外医学社.2001
  23. 山田信博ほか編:高脂血症ナビゲーター.メディカルレビュー社.2003
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  27. Allen HD, et al.:Moss and Adams' Heart Disease in Infants, Children, and Adolescents Including the Fetus and Young Adult. Lippinscott Williams & Wolikins. 2001
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  29. Josephson ME:Clinical Cardiac Electrophysiology. Lippincott Williams & Wilkins. 2002
  30. Last JM著,日本疫学会訳:疫学辞典.日本公衆衛生協会.2000