しんふぜん
心不全

5. 心臓にやさしい生き方

心不全の患者さんに勧められる心臓にやさしい生き方について説明します。

a) 一般的な注意
過労はもちろん、風邪を引いたりすると、心臓に負担がかかります。肥満は心臓に負担をかけます。たばこは心臓や肺に有害です。心不全とわかったら、禁煙すべきなのはいうまでもありません。多量の飲酒も避けるべきです。

b) 運動について
心不全の重症度に合わせた運動制限も必要です。しかしながら、過度の制限は逆効果です。心不全の程度に見合った運動は、運動能力のアップにつながり、大切な生活習慣と考えられるようになってきました。適切な運動処方に基づく心臓リハビリテーションは、患者さんの生活の質を改善し、入院を減らす事が分かっています。

c) 食事、塩分、水分について
食事では塩分摂取の制限が大事です。日本人の平均的な食塩摂取量は一日12gといわれていますが、軽症の慢性心不全では一日7g程度に制限が必要です。ナトリウムは、水を体にためる性質があり、食塩を多く摂取すると循環血液量が増加して心臓に負担がかかるからです。塩分の多い漬け物や汁物は、食べる回数と量を減らしましょう。パンやうどんといった加工食品にも相当量含まれているので、知っておきましょう。食塩の使い方の工夫として、食べるものに少々振りかけるほうが、塩味を感じやすく少量の摂取量ですみます。料理の味付けの際は、減塩しょうゆなどを使用し、酢やレモンなどの酸味や香辛料を利用すれば、減塩でもおいしく食べられます。
過剰な体液の増加を防ぐため、水分を必要以上に摂らないことも大切です。心不全の患者さんは、脳が過剰に水分不足を感じて、渇きを強く感じたり、塩気を求める傾向がありますので、水分を摂りすぎないように気をつけましょう。
また、過食は避けましょう。肥満を合併している場合は、カロリー制限が必要です。

d) 入浴について
入浴は血管が拡張して心臓が楽になり、気分的にもリラックスもできるので、慢性心不全の患者さんにもおすすめできます。しかし、冬場の入浴や熱い湯などは心臓に負担をかけて、心事故を起こす原因にもなりますので、十分な注意が必要です。
軽症慢性心不全の患者さんの入浴では、40度の微温に調節し、42度以上にはあげないことが大切です。つかるときも肩までつからず胸ぐらいにしたほうが心臓への負担も軽くなります。入浴時間は10分間以内というのが推奨できる入浴時間です。
入浴時は浴室全体を温めておき、洗い場との温度差をできるだけ少なくしておくことも事故を防ぐために大切です。