Impact of Elevated D-Dimer on Diagnosis of Acute Aortic Dissection With Isolated Neurological Symptoms in Ischemic Stroke (Circ J 2015; 79: 1841-1845)

編集長のコメント:
東北大学循環器内科 教授
Circulation Journal 編集長 下川 宏明 氏

虚血性脳梗塞の原因の1つとして大動脈解離があります。本研究は,血栓症のバイオマーカーであるD-ダイマーが,虚血性脳梗塞の原因検索における無症候性大動脈解離の診断に有用である可能性を示した点で意義があります。
出典元:Medical Tribune(2015年8月27日号P24)

著者の横顔:
所属先:金沢大学循環器内科・保健管理センター
氏名 :吉牟田 剛氏

 吉牟田氏は,1997年に香川医科大学(現,香川大学)を卒業。長崎大学循環器内科において臨床研修後,2002年,国立循環器病研究センターの心臓血管内科レジデント,専門修練医を経て,その後,同センター心臓血管内科,血管科に勤務した2007〜11年のデータを今回解析した。当時,血管科では入院患者数が年間約550例あり,大動脈瘤の術前検査やAADに対する集中治療,血管炎や先天性血管疾患,閉塞性末梢動脈疾患,深部静脈血栓症などの静脈疾患の治療などを担当した。血管外科,脳内科,放射線科,救急部との緊密な連携体制があったことが,診療科の垣根を越えた研究の構想につながったという。  同氏は,2011年に金沢大学循環器内科に入局,山岸正和教授の指導を受け,今回の論文をまとめた。虚血性脳卒中とAADは,両疾患とも一刻も早く診断し治療することが救命の鍵になる。今回の結果から,AADに起因する虚血性脳卒中か虚血性脳卒中単独かを迅速に鑑別するには血清D-ダイマー値が有用なことが示された。「目の前の患者は麻痺という脳梗塞患者と同じ症状を呈していても,AADであれば,その病態を反映してD-ダイマー値は著明に上昇する。神経学的所見を呈する患者のD-ダイマー値上昇は,AADが強く疑われ,造影全身CTを行うべきことを示唆する」と吉牟田氏。  同氏の今後のテーマは,血管エコーの普及。「エコー検査は,ベッドサイドで簡便に,頸動脈や腎動脈の動脈硬化,腹部大動脈瘤などを評価できる。日常診療や救急外来でのエコー検査の普及につながる研究に取り組みたい」と抱負を述べている。
出典元:Medical Tribune(2015年8月27日号P24)