Aortic Insufficiency in Patients With Sustained Left Ventricular Systolic Dysfunction After Axial Flow Assist Device Implantation (Circ J 2015; 79: 104-111)

編集長のコメント:
東北大学循環器内科 教授
Circulation Journal 編集長 下川 宏明氏

 補助人工心臓の主流は植え込み型LVADですが,術後の大動脈弁(AV)閉鎖不全が問題になっています。本研究では,自験例においてその予防因子を検討し,術前の心不全期間が短いことや自己AVの開口があることを明らかにした点で重要です。
出典元:Medical Tribune(2015年1月29日号p26)

著者の横顔:
所属先:東京大学大学院重症心不全治療開発講座
氏名 : 今村 輝彦氏
 今村氏は2010年に東京大学循環器内科に入局,同科大学院博士課程を経て重症心不全治療開発講座特任助教となった。同講座の絹川弘一郎特任教授らは,LVAD補助により自己大動脈弁が開放せず,AIを合併して転帰が悪化する症例が少なくないことを2011年に初めて報告。今回の検討では,LVAD植え込み後の自己弁開放例ではAI発生が皆無である一方,自己弁閉鎖持続例では,軸流ポンプ使用がAI発生リスクを高めることが示された。現在,術前後の心不全内服治療や心臓リハビリテーションと自己弁開放,AIの関係について解析を進めているという。  国内の植え込み型LVADの臨床経験は2014年1月現在300例にすぎず,内科的治療から外科的治療に移行する至適なタイミングも十分明らかにされていない。今村氏は「今回,疫学的手法を用いてAI予測因子を解析しており,エビデンス構築に向けて一歩踏み出せたのではないか。今後,移植適応外の患者を含めてLVADが重症心不全患者の治療の柱として普及するために,適応基準や合併症対策について客観的データを積み重ねたい」と話す。  また,同氏は「現在,心不全患者の多くが内科的治療を受けている。しかし,心不全が長期化した後の植え込み型LVADは治療反応性が低下し,救命は可能でもQOLが著しく低下する。このことは内科医にとって,患者の社会復帰の可能性を左右する重要な問題で, LVAD適応症例をいかに外科に橋渡ししていくかについてエビデンスを構築する必要がある。多くの内科医,外科医がこのような問題意識を共有し,重症心不全の治療戦略を検討していくために研究に取り組んでいきたい」と抱負を述べている。
出典元:Medical Tribune(2015年1月29日号p26)