代表理事ごあいさつ


一般社団法人日本循環器学会
代表理事  小室 一成
(東京大学循環器内科学)


 この度、一般社団法人日本循環器学会の第18代 代表理事を拝命いたしました。本学会は、昭和10年(1935年)「日本循環器病学」誌が創刊され、翌年には第1回総会が開催されており、80年に渡る長い歴史があります。このような伝統ある学会の代表を務めることになり、大変光栄に存じますと共に身の引き締まる思いです。日本循環器学会の歴史、過去の錚々たる先輩諸先生方や理事長のお名前を拝見するにつけ、本学会が日本の循環器病学の発展に果たした役割の大きさを改めて認識いたしております。

 日本循環器学会は、平成28年(2016年)6月時点での正会員数26,014名、準会員数476名、循環器専門医数13,541名と会員数が多いのみならず、循環器疾患の重要性から、わが国の医学会を代表する学会であります。本学会は、国の法人制度改革に呼応して、平成24年(2012年)4月1日から一般社団法人に移行いたしました。社員総会は正会員から選ばれた283名の社員により構成されます。平成28年(2016年)6月24日に社員総会が開催され、30名の理事と2名の監事が選出されました。社員には女性34名、外科43名、小児科7名、基礎系12名が含まれ、理事30名の中には外科系より2名、小児科系より1名、基礎系より1名、女性より1名が選出され、これまで以上に専門領域のバランスを考慮した運営が可能となりました。

 私は、初期研修後32年間常に循環器内科医として臨床、教育、研究を行ってまいりました。米国に4年間留学し、現職前には2つの国立大学の循環器内科の責任者も務め、様々な経験を積ませていただきました。前述したように本学会は、会員数も順調に増加し、今まで素晴らしい伝統を築いてまいりました。しかし現在の循環器医療を取り巻く状況は、決して楽観できるものではなく、多くの課題に対し学会としても真摯に取り組んでいかねばなりません。私は、今までの経験を生かし課題克服に向けて精一杯努力する所存です。

 今後在任期間の2年間、中心的に行っていきたいと考えることを以下に述べさせていただきます。まず目標を明確にするために、現在策定中である「循環器病克服5か年計画」を完成させます。「5か年計画」では、人材育成、医療体制の充実、予防・国民への啓発、登録事業の促進、基礎・臨床研究の強化の5つの戦略を挙げています。5戦略下の事業を展開する中で、目標の達成度を定期的に確認し、着実に進めてまいります。これらの事業を全国的に広く確実に展開するためにも「脳卒中・循環器病対策基本法」の成立を目指したいと思います。心不全をはじめとする循環器疾患患者数が増える中で、循環器専門医ばかりでなくチーム医療を支えるスタッフを育成し、病院から診療所、在宅にいたる診療体制を整備することが急務です。循環器疾患の重要性に関する国民への啓発を促進し、予防活動をさらに活発化します。遅れていた疾患登録事業のシステムを整備し、全国レベルでの登録事業を実施する必要があります。そのデータは、実地診療に生かすばかりでなく、レジストリー研究や諸策の立案に役立てたいと思います。また臨床試験に関しても、規則を厳格に遵守しつつ、ガイドラインや適応拡大に資するような質の高い試験を学会が率先して進めていきます。未だ多くの循環器疾患において病態の解明が進んでおらず、原因に基づいた治療ができていない現状において、基礎研究の重要性も忘れてはなりません。ゲノム、疾患モデル動物、iPS細胞等の研究を集中的に行い、病態を解明し、創薬やデバイスの開発に繋げていきたいと考えています。
 本学会が、AHA、ACC、ESCといった欧米の学会と並んで世界の3極の一つとなるには、さらなる国際化が必要であり、とりわけアジアへの対応が重要です。学術集会への海外からの参加者や日本への留学生が増え、アジアの諸国と協力して臨床試験や研究が行われるようにしたいと存じます。
 最後になりましたが、熊本地震により被災されました皆様に、心よりお見舞い申し上げます。本学会としましては、厚生労働省・地方自治体と協力して医療従事者の派遣などの支援活動を行いました。さらに災害時対策に万全を期するために新しい委員会を設立し、今後の震災時における活動計画を策定していく所存です。

 これから2年間、全力を傾けてこれらの課題に取り組んで参ります。会員の皆様におかれましては、温かい御指導、御支援の程、何卒よろしくお願い申し上げます。

2016年6月24日   日本循環器学会 代表理事 小室一成